夢が破れる、は、悪くない

「計画倒れ」

 といえば、聞こえも縁起も悪いようだけれど、実は、そうでもない。


計画通りに、ことが進まない時。ひとは“期待”や“希望”が、ゆっくりと崩れ落ちてきて、その中にある自分という存在さえもズルズルと滑り落ち、このまま埋もれ去るのではないかというような“不安”に呑み込まれるような感覚になる。


その感覚になると、いろいろな反応が起こる。「おかしいな・・・」と思うひともいれば、「やっぱりダメなんだ・・・」と思うひとも。何れにしても、決して気持ちのいいものではない。だから、無意識のうちに、その気持ちを終結させるため、“色々なこと”をしだす。


“色々なこと”とは、それぞれの性格やいつものパターンである場合がほとんどだ。あるひとは“あっさりあきらめ”るし、あるひとは“全ての行動が停止し身動きできなく”なる。別なひとは逆に“必死に努力と行動をし続ける”(それが無駄とわかるまで)、といった具合。いずれの場合も、その人なりの”よくあるパターン”で終わるのが特徴。そして、密かに自己嫌悪に陥る。多くの人は、この感覚を味わいたくなくて、次第に”夢”や”希望”を持つことを諦めていく。


けれども、本当はここからが勝負なのだ。ねばるべき、とか、諦めないで、とか、そういう話ではない。ダメかも、と思った時に、初めて人間は真剣に考える。これが本当に「自分のしたいこと」なのか?「自分がするべきこと」なのか?または(これが意外に重要なのだけど)必要に迫られて「仕方なしに」当初の計画とは別なことを始めるかもしれない。お金や暮らしのために。実は、こうしたことの全て(お金のために、も含めて)が、「次の扉」へと続く大切で重要なステップなのだ。


自分の話をするのは気恥ずかしいけれど、わたしは学生時代、政治家になりたいと思っていた。「北海道出身であれば、農政に詳しくなるべき」と勝手に思った。当時は女性進出が進んでいなかったこともあり、農政の中核を知りたくば、日本の農業関係の企業に入ってもお茶汲みしかできないと聞かされていたため、外資系で世界最大の穀物商社に入社し穀物トレーダーとなった。(サラッと書いたものの、一次試験では落とされ、再度自分からアプローチした後、最終的に5000倍の確率の“狭き門”を通って得たポジションだった。)食糧管理法がまだ存在した時代に、願い通り小麦の日本への輸出の水際を任された。その仕事をしていたのは、日本でわたしを含め数人しかいなかった。私は少しでも安い穀物を日本の食卓へ!と、張り切ったものだった。


けれどもそこでわたしが目にしたのは、官僚・政治家・経済界が絡み合い、優秀なエリート達が作り守っていた“偽りの巨塔”たるシステム構造だった。入札とは名ばかり。“紐付き”の入札制度とそれを糧とする財閥系も含めた巨大商社などの経済組織。ある日、そのカラクリを知った青っチョロいわたしは、“社会の不正”を前に新橋の焼き鳥屋で泣いて騒いだ。自分など太刀打ちできない世界であることを思い知り、打ちのめされた。これは、私が想いだけでどうにかできる世界ではない、とりあえずなんらかの成果を自分なりにあげて納得できるところまでやったら、その世界を去ろうと決めた。


25歳で550億の年商をあげると、それが会社始まって以来の史上最高売り上げだったことから、会社を辞めて郷里へ戻った。都落ちの気分、とはこのこと。何のあてもなく、疲れ果てて戻った郷里では、ただ“出来る事・好きな事”を使った外国語学校・翻訳会社を興した。程なく成功し、これからは安定的な営みができると思った矢先、最初の結婚相手だった元夫から、代理店開拓の営業職をやりたいから手伝って欲しいと言われた。悩み考えた末、「3年だけ」を条件にわたしも参画することに。“お手伝い”のはずが、やっぱり本気になってしまい、1年もしないうちにその仕事は“全国展開”へ。すれ違い生活と、当初からのわたしのコミットメント不足から離婚したのだけど、その仕事は続けたまま。ある日、「あれ、わたし、何やっているのだろう?」と自分の道を再度探すことに数年を費やし、やっと「これだ」と思うものを見つけた。それが、現在の仕事だ。


こう書くと、わたしの人生は計画通りにいかず、ただ流されていただけに思える。特に、代理店の仕事は・・・。けれども、振り返れば代理店の仕事をした時こそが、実はわたしの大チャンスだったことが今、わかる。全国を回って老若男女、フリーターから政治家や大企業の役員までありとあらゆる人と事業性について話し、トレーニングをしたことで、“全種類のひとたち”の言葉、考え、行動を知ることができたのです。そして、そのことが今の仕事に必要な経験になっています。


最近人生を真剣に振り返り、また、新しい仕事を始める中「ハートブレイクな計画倒れ」こそが、次の道を開くのだ、と、実感しているところ。


今日も人生の扉を開いて出会ってくださり、ありがとうございます。

「計画倒れ」こそが、天からの救いの手であることに気づく昨今。 

Mika Nakano Official Blog

軽井沢から、ライフ・文化・自己実現・現実化・コーチング・ピープルビジネスのエッセイをお届けしています。

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