見たい世界・行きたい世界と、”怖れ”

「怖いなぁ・・・」 


海のど真ん中で、ボートの上から深く青い水面を見ているとなんともそら恐ろしくなる。泳ぎに自信がないわたしは、足がつかない深さの水に入ると想像しただけで、ゾクゾクする。プールなら足がつかなくても底が知れているし、端までいけばつかまるところもあるからそんな風には思わない。でも、海は全く違う。映画やテレビで溺れるシーンを幾度も見ているせいか、はたまた過去生の記憶(?)かわからないけれど、溺れて苦しみながら水中に沈んでいく自分が、すぐに、そして容易に、想像できる。 


そのわたしが、海に飛び込もうとしている。「あぁ、気が乗らないなぁ・・・嫌だなぁ・・・」いつもそんな風に思いながら、仕方なく飛び込む。飛び込んだ後がこれまた、もっと嫌。久しぶりに潜る場合、耳抜きをしながら水中に沈んでいくのがうまくいかないことがあるからだ。そう、わたしは“ほとんどかなづち”だけれど、ダイビングをする。数えると、この20年で100本以上は潜っている。海中から見上げる太陽の光、上下左右360度見ることができる美しい魚たちの舞、そして浮遊感。恐怖を超え、リスクを冒してまでも、見たい世界・感じたい世界が、海面下には、あったから。 


前回は5年前にメキシコのセノーテ(湖)でのダイビングだった。海でのダイビングは実に7年ぶり。いつにも増して、億劫だ。誰に頼まれたわけでも、誘われたわけでもない。もっと言うと、夫を誘ったのだけど断られ、ひとりでも行くんだ!と、申し込んだ。そのくせに、である。 飛び込む直前、ボートの縁に立って思う。「タンクには酸素が充分にあり、ボタンを押したら空気が入り膨らんで海面に浮くジャケットを身につけ、両足にはフィンもつけている。絶対大丈夫!」それで、やっとエイヤ!と飛び込む。 


ドボンという音と一緒に、目の前に水の泡が広がる。泡を見ながらあわあわすること数秒。泡が落ち着き視界が晴れても気をぬく暇はない。今度は「いち早く潜るよう」頑張らなければいけないのだ。なぜなら、波が立っている時の海の表面は、身体が揺らされてとても心もとないし、グループの他の(わたしより上手な)ダイバーたちがどんどん潜っていくのに遅れたくないから。まだヘタッピな初心者のとき、沈めずに水面で焦ってジタバタしてインストラクターに下から引っ張ってもらったことがあった。あれは恥ずかしかった。ああはなりたくない。そんな思いも、働く。そうやって、潜ることができて、やっとある程度落ち着くことができるのだ。 


海中を眺めると、そこにはあらゆるものが“浮遊する”静かな世界が広がっている。陸では「(身長)165㎝の高さから前後左右を平面的に」しか見ることができないないわたしが、水中に入ると、「水深40メートルまでなら自由に360度立体的に」見ることができる。しかも「万有引力の法則」からはずれて、だ。 


地上とは全く異なるこの世界の虜になるひとは、多い。久しぶりの海は、わたしを裏切らなかった。浦島太郎に出てくる“竜宮城”というものは、明らかにダイビングの機材が開発される前に作られた話なのだろうけど、よくできた話だと感心する。場所によっては本当に「絵にも描けない美しさ」にただ目を見張り、ひとり驚嘆の声を上げる(実際は、酸素を摂るレギュレーターをくわえているため、モゴモゴ言っているだけ)ことも、しばしばだからだ。そして、わたしはそんな経験がしたくて、幾多の“怖ろしさ”を超えて、海の淵へと向かうのだ。 


「こうなったら、どうしよう」「こうならなかったら、どうしよう」そういった“具体的な不安”や、もっと漠然とした「見ただけ・考えただけで、足がすくむ」という身体感覚が伴う“怖れ”に、ひとは左右される。そして、多くのひとは“怖れ”があると、それ以上先へ行こうとはしない。ここで「怖れを無くすること」に力を注いでもいいけれど、実は、怖れながらも進むことで、なんの問題も起きずにその世界を体験することはできる。つまり、その先の世界を見るために、“怖れ”を超える必要さえもない、ということなんだ。実際、気づくのは、その世界に到達したら“怖れ”には、もはやわたし達の行動を制限する力が、失われていることがわかる。“怖れ”には「なんの効力もない」ことがわかるだけで、わたし達は、その先にある美しい世界を見ることができるのだ。 



今日も人生の扉を開いて出会ってくださり、ありがとうございます。 

海の中じゃなくても美しいものは日々の中に十分あるなぁ、とも、今回は思った。


ザ・ライフアカデミーでは、自分が見たい世界・経験したい世界に向かうため、あなたの持つ”怖れ”の扱いを学びます。 

Mika Nakano Official Blog

軽井沢から、ライフ・文化・自己実現・現実化・コーチング・ピープルビジネスのエッセイをお届けしています。

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